ミスター・クリングルはあらゆる点で型破りである。順番からいえば、まずは本でお目見えし、次いでスクリーンからご挨拶、となるのだが、彼の場合はそのための手続きが逆になった。
<風変わりな老人がいる。その言動から一連の出来事が発生する>というストーリーは、当初、映画用に思いついたものだった。それを本にしてはどうか、という話が持ちあがったのは、映画の制作がかなり進んでからである。
したがって、本書は筆者が独力で書きあげたとは、とてもいえない。筆者の思いついたストーリーを二十世紀フォックス映画会社のために脚本化し、監督としてメガフォンを取ったのはジョージ・シートンだった。そんなわけで、本書には彼のアイディアも多々盛りこまれている。言うなれば本書はジョージ・シートンとの合作であり、筆者はそのことに深く感謝している。
さらに、ミスター・クリングルを信じて映画『34丁目の奇跡』のプロディースをされたウィリアム・パールバーグと、ミスター・クリングルを版元に引き合わせる労を取られたウォルター・M・シンプソンの両氏、および、ミスター・クリングルを本に登場させることを許可された二十世紀フォックス映画会社に、ミスター・クリングルに代わり深甚の謝意を表したい。
ヴァレンタイン・デイヴィス
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