パーラ(上)(下)
ドイツ児童文学の旗手、ラルフ・イーザウのスリルあふれる冒険ファンタジー

ことばは力、悪に勝つ
パーラ(上)沈黙の町
パーラ(下)古城の秘密
(上)沈黙の町 (下)古城の秘密

A5判/各定価 (本体1,500円+税)
上:ISBN978-4-7515-2136-6/下:978-4-7515-2137-3

 「モモ」や「はてしない物語」などで有名な世界的ファンタジー作家、ミヒャエル・エンデの紹介でデビュー、日本での第一作「ネシャン・サーガ」は3部作累計で60万部の売上と、今最も期待されているドイツのファンタジー作家、ラルフ・イーザウ。夢と現実という2つの世界が交差する壮大な「ネシャン・サーガ」、何者かの手によって失われてゆく記憶を取り戻すべく奔走する双子の姉弟の冒険を描く「盗まれた記憶の博物館」(ともにあすなろ書房)は、どちらも中高生の熱狂的な支持を受け、新作を待つ読者の声はヒートアップ。
 2004年、満を持して発売されるこの「パーラ」。その魅力はなんといっても主人公の少女、パーラ。花柄のワンピースで敵の居城に乗りこみ、知恵と頭を使って突き進む姿は痛快そのもの。剣と魔法で竜と戦って…。そんなファンタジーのイメージをくつがえす異色の作品。そしてパーラが自由自在に操るテンポの良い言葉。ふだん何気なく使う“言葉”の楽しさ、大切さが伝わってくる。



 舞台は“詩人の町”シレンチア。パーラは青い瞳と巻き髪が魅力の12歳。言葉遊びが大好きで、新しい言葉を作ることも大得意。ある日パーラはいつものように大好きな“語り部のおじいちゃん”ガスパーレのもとへと遊びに向かう。だが、そこで彼女を迎えたのは信じられない光景だった。なんと、ガスパーレが言葉を失っていたのだ。
 これが全ての始まりだった。シレンチアの町じゅうを、この“奇妙な言葉の喪失”が襲う。特定の単語を発音できなくなる者、言葉のはじめや終わりを飲みこんでしまう者、たくさんの言葉を忘れる者…。
 手がかりは、ガスパーレが指差した「城」。城の持ち主は、よその土地で暮らした後に生まれ育ったこのシレンチアに戻ってきた金持ちの男、ジット。だが、町のだれも彼の姿を見たことはないし、話したこともない。
 原因はジットにあるのでは? 人々の言葉を奪おうとしているのでは? そう思い始めるパーラ。「ジットの思い通りにはさせない!」パーラはひとりで立ちあがり、ジットの城へと向かう…。

【著者紹介】
Ralf Isau (ラルフ・イーザウ)
1956年ベルリン生まれ。コンピュータのソフトウェア設計の仕事をしながら、無味乾燥なデータの世界から逃避しようと物語を書きはじめる。ファンタジーの伝統とコンピュータゲームの興奮を合わせ持つ独特の作風にミヒャエル・エンデが注目し、自ら出版社に原稿を持ち込んでくれたのがデビューのきっかけという。
「ネシャン・サーガ」シリーズに続き、1997年に発表した本書でドイツ児童書界で最も権威あるブックステフーダー賞を受賞。この賞の審査員の半数は子どもの読者であり、受賞作は「その年、子どもに最も愛された本」でもある。2001年、20世紀を根底から問い直す大作『暁の円卓』(長崎出版)が完結し、名実ともに「エンデに次ぐドイツ・ファンタジーの旗手」となる。南ドイツ、シュツットガルト近郊在住。
 
酒寄進一(さかより・しんいち)
1958年生まれ。上智大学、ケルン大学、ミュンスター大学に学び、新潟大学講師を経て、和光大学表現文化学科教授。子どもに関わる表現全般に取り組みつつ、現代ドイツ児童文学の研究と紹介を行なっている。
主な訳書にラルフ・イーザウ著「ネシャン・サーガ」シリーズ、リザ・テツナー著『黒い兄弟』(ともにあすなろ書房)、ハイケ・ホールバイン『あくまくん』(徳間書房)、クラウス・コルドン著『ベルリン1993』(理論社)などがある。


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